SDGsのその先へ
2015年9月の国連サミットで採択された「SDGs(Sustainable Development Goals)」。2030年までに持続可能でよりよい世界を目指す国際目標です。SDGsを構成する17のゴール・169のターゲットは市民・企業・行政・組織などが問題意識を共有するユニバーサルな指針であり、日本でも積極的に取り組んでいます。
SDGsが浸透し、取り組みが評価を得る一方で、実際に行動を起こしたことで見えてきた新たな課題がでてきています。また、私たちを取り巻く環境は目まぐるしく変化しており、今回の新型コロナウイルス流行のように、それまで当たり前だったことが1つのきっかけでガラリと変わる可能性もあるのです。つまり、時の経過とともに求められる行動が変化するということ。長崎大学ではSDGsの先を見据え、よりよい未来を構築するために現状を検証し、新しく有効な「答え」を探求し続ける必要があると考えています。
長崎大学が考えるプラネタリーヘルス
長崎大学ではプラネタリーヘルスを『「地球の健康」を支え続けるために有効な「答え(解決策)」を探求し、私たち自身の意識変容、行動変容を促す取り組み』と定義しています。
地球の健康とは、地球とそこに存在する生態系全体の健康です。そして、人間の社会もこの生態系の一部なのです。ですから、プラネタリーヘルスを考えることは、私たち人間の健康や社会の営みを考えることでもあります。そのため、科学の視点だけでなく、市民・企業・行政などの多様な視点を重ねて行うことが必要不可欠です。複数の視点で考えるので、アプローチも多種多様で、プラネタリーヘルスに至るたくさんの道が存在すると言っていいでしょう。
プラネタリーヘルスはとてもしなやかで、多様性に富んでいます。長崎大学は、特定の学部や専門性、学内外といった枠組みにとらわれることなく、地球と将来世代のためにさらに新しい「知」を創出し、提案することに挑戦していきます。さらにより良い「答え」を探して、SDGsのもう一歩その先へ。それが長崎大学の考えるプラネタリーヘルスなのです。
なぜ長崎大学がプラネタリーヘルスに 挑戦するのか
2020年1月6日、長崎大学はプラネタリーヘルス実現への挑戦を宣言しました。なぜ、長崎大学が?と思われた方もいるかもしれません。この背景には、幕末の長崎で誕生した医学伝習所を起源とした長崎大学のルーツと長い歴史が大きく関係しています。
江戸時代、海外に開かれた唯一の玄関口だった長崎には海外からさまざまな病気や離島の風土病が持ち込まれました。古くから未知の感染症対策の最前線に立ち続けてきた歴史と経験を有しているのが長崎大学なのです。そして、現代においても他大学に先駆けて感染症研究のフィールドを世界に広げグローバルヘルスの実現を深く追求してきました。特に熱帯医学の研究と実践を通じて、人間と環境(地球)とのつながりについて折に触れて考えてきた経験があります。
また、長崎という土地の歴史や自然も大学に大きな影響を与えています。
原爆投下という悲惨な経験を持つ被爆者の方々への支援を通して、世界の平和や差別といった課題に真摯に向き合ってきたこと。石炭産業や造船、製鉄など日本産業革命の中心地のひとつとなった歴史があること。そして、様々な国の文化と科学を積極的に取り入れ共生することで、日本に様々なイノベーションをもたらしてきた土地であること。そして、多くの島々や豊かな海、火山を含む山々の織りなす多彩な自然環境に恵まれた土地であること。
長崎大学はこのような歴史と自然を持つ地域で150年以上にわたり活動してきました。だからこそ「プラネタリーヘルスに貢献する大学」を目指すのは必然であり、プラネタリーヘルス実現への挑戦は、22世紀に向けたイノベーションの起点となる決意の現れなのです。