聞きなじみのない言葉だな、と感じる方も多いかもしれません。というのも、世界的に有名な学術雑誌
『ランセット』によってプラネタリーヘルスが提唱されたのは2015年。まだまだ新しい考え方なんです。
誕生して10年足らずで世界各国へ広がり、日本でも大学を中心に普及・推進活動が行われプラネタリーヘルス。
今、高い注目を浴びているその概念についてわかりやすく紹介します。
「プラネタリーヘルス」という言葉にどんなイメージを持つかな?
環境汚染や気候変動といった地球規模の課題です。
いい視点だよ。プラネタリーヘルス=惑星の健康、から環境問題と捉えたんだね。
そうです。
実は、プラネタリーヘルスは「地球の健康」と「人間の健康」は
相互に関係しているという考え方なんだ。
うーん、わかるようなわからないような・・・。
例えば「温暖化」。海水温上昇がおきると赤道付近の魚は適温を求めて北へ移動する。すると、その地域では魚が獲れなくなり人々の食糧問題(低栄養)につながってしまうんだ。
地球の健康が失われれば人間や社会の健康も失われる。けれど、
その原因は人間が地球で暮らすことで生まれている、と。
そういう現代の多様な課題をみんなで知恵を出し合って解決し、新しい世界を創っていくことがプラネタリーヘルスの目指すところだね。
プラネタリーヘルスって、SDGs(持続可能な開発目標)とはどう違うんですか?
どちらも「未来に向けて持続可能な社会(地球環境)を目指す」という部分は同じなんだ。では、SDGsが2030年に達成すべき17のゴールを掲げているのは知ってるかな?
もちろん知っていますよ。SDGsの目標があるから、個人・組織関係なく世界中で多様な取り組みが生まれているんだと思います。
ところがそこに矛盾点があることにあまり焦点が当てられていないように感じるんだ。代表的なのは、本来すべてのゴールに気を配らないといけないのに一部の目標だけを選んで取り組む場合が多くなってしまったことだね。
確かに、そういう事例は多い気がします。
プラネタリーヘルスでは地球全体のバランスを考えるので、1つの事柄に対して別の事柄の関係性を見ていくことに重きをおいているんだ。
具体的にはどういうことですか?
森林を伐採して農地に転用したとしよう。この場合、食糧問題は解決するかもしれないけれど、生態系や温暖化にはマイナスの影響が出るかもしれない。
なるほど・・・。
常に「自然と人間社会との関係性」や「ローカルとローカルの関係性」「ローカルとグローバルの関係性」を考える。そして長期的な目標を見据えて短期目標をクリアし続けていく。これがプラネタリーヘルスの特徴だね。
人間も地球の一員だからこそ、地球全体の健康を継続的に考える。プラネタリーヘルスのことが少しわかったような気がします。
長崎大学ではプラネタリーヘルスの概念を浸透させるために、プラネタリーヘルスを総合的に解説した書籍を自ら翻訳して教科書とし、各学科の学生に必修科目として履修させているんだよ。
なぜですか?
経済学、教育学、農学、医学、工学など様々な分野の人が一緒になって考えることで持続可能な社会の実現につながるからだね。実際に、長崎大学のプラネタリーヘルスチームは分野の縦割りを取り払ったメンバーが集まっているんだ。
プラネタリーヘルスのマインドを持った学生の育成に力を入れているんですね。
ただ、プラネタリーヘルスを大きなスケールで考えすぎるのはよくないんだ。問題のイメージが大きくなりすぎると自分事としてとらえられなくなってしまうからね。
あくまでも自分の身の回りが地球に繋がっているところに意識を持っていく、と。
そうだね。食べ物、電気、自動車、服・・・。こういったものが自分のところに「くるまで」と「きたあと」を想像することが地球の健康を考えるきっかけになるんじゃないかな。